ThunderBay サンダーベイの位置
赤いアメシストで有名なカナダ オンタリオ州のサンダーベイは、北アメリカの五大湖の1つ、スペリオル湖の北部の人口11万人の町です。また、オンタリオ州西部で最大の町です。西にアメリカとの国境があり、ミネソタ州と接していて、トランスカナダハイウエイ(カナダ横断道路)が通り鉄道の拠点でもあります。
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赤い線で囲まれた地域は市街地です。
カナダ サンダーベイ産 アメシスト
3種類のサンダーベイ産アメシスト
下の写真 サンダーベイ産アメシストの3種類の結晶
結晶表面が赤いアメシスト(写真左)、透明な紫に赤いポイントのある結晶(写真中央)、濃い赤に薄いポイントのある結晶(写真右)
サンダーベイ産アメシストは3種類があり、バラエティーに富んでいます。
サンダーベイ地域の地質とアメシスト
サンダーベイの北東にあるSibley半島、ブラックベイ半島と半島の根元に位置するNipigon(ニピゴン)には、アメシストの岩脈が多数点在しています。
地球上でもっとも古い地質を構成するカナダ楯状地の一部です。
カナダ楯状地と堆積岩
この地域はカナダ楯状地の中でもSperior Province(スペリオル地質区)と呼ばれる花崗岩、片麻岩と輝緑岩が変質したグリーンストーンベルトで構成されています。
その基盤岩の上に、始生代の堆積岩があります。始生代後期(約27憶年前)から始まった大陸の衝突で、Algoman Orogeny(Algoman造山運動)が起きた時、二つの大陸の間にあった海が浅い海(Animikie Basin)から陸化するまでの間にAnimikie Group(約19億年前)とSibley Group(約15億3、700万年前)が堆積しました。
Sibley Group
この地域に広く分布する堆積岩のSibley Groupは、Animikie Basin(地向斜)と呼ばれる海が陸化するまでの特徴的な古環境を表した5つの地層に細分化されています。
古い順(下部から上部)に、
- PassLake formation 湖沼系環境
- Rossport Formation 塩水プラヤ系環境 (湖の跡のくぼ地に塩などの塩類堆積物が集まった塩類平原)
- KamaHill Formation サブカタイプ環境(sabkha types) (砂漠気候の内湾にできる蒸発岩と炭酸塩岩で岩塩、石膏、霰石の沈殿層)
- Outan Island Formation 水面から陸地の環境
- Nipigon Bay Formation 風成環境
アメシスト鉱山のSibley Groupの堆積岩は、 Sperior Province(スペリオル地質区)の花崗岩 Hilma Lake Graniteの上に堆積しています。
Mid Continent Rift
約11億年前、アメリカ大陸中央部に長さ2,000kmの大地溝帯ができ、現在のアフリカ大地溝帯のような巨大な溝ができました。
花崗岩(Hilma Lake Granite)と上部のAnimikie Group、Sibley Groupの堆積岩に断層ができ、輝緑岩の岩脈の上昇と熱水が侵入する火成活動が起きました。
このように火成活動で貫入した輝緑岩をローガン・ダイアベース・シルズ(Logan Diabase Sills)と呼んでいます。
テーブル型の山容(メサ)をしたマウントマッケイ山(Mt Mckay)を含むノーウエスター山地(Nor’Wester Mountains)は、Animikie Groupの頁岩で出来ていますが、山頂部は約60mのDiabase Sillが残っていて、山体の内部にも輝緑岩のシル(Diabase Sill 水平な貫入脈)を残しています。
また、サンダーベイの町から見えるスリーピングジャイアントは、巨大なDiabase Sillsです。Sibley半島の南部 銀の鉱山だったsilver Isletの町の北西には、輝緑岩の垂直な板状岩脈(Diabase Dike)のSea Lionがあります。
熱水の侵入
断層に沿って上昇したシリカを多く含んんだ熱水は、ウラニウムを持つHilma Lake Granite中で放射線と、赤いSibley層(泥岩)の鉄分を取り込んでアメシストの岩脈を作りました。
放射線によって歪められた水晶の結晶構造に鉄分が入り、赤いアメシストができました。
ウイスコシン氷河期 Wisconsin Glaciation
約200万~1万年前にかけて、カナダはウイスコンシン(Wisconsin)氷河期になり、ハドソン湾を中心に厚さ3,000mの亀の甲羅のような分厚い氷床(Laurentide Ice Sheet)が出来ました。地球の気温が上がるにつれ、氷河は溶けながら流れ一部は五大湖まで南下しました。巨大で莫大な重量の氷河は、Abinikie GroupやSibley Groupの頁岩や砂岩、泥岩と貫入していた輝緑岩の岩脈を1,000m以上削り、大きな窪地になって後のスペリオル湖を形成しました。分厚い氷河の重みで沈んでいた台地は次第に隆起しましたが、地下深部まで柔らかい地層が堆積していた地域は窪地になって残っています。また、氷河は水平方向にも広い範囲を削ったので、Sibley半島、Black Bay半島の沿岸と周辺の島々は北東から南西の方向を向いて残っています。Sibley半島の上部の堆積岩も氷河で削られ、地下から上昇した溶岩(輝緑岩)が水平に広がったDiabase Sillsは、スリーピングジャイアントになりました。花崗岩の上部の堆積岩もアメシストの岩脈と共に削られ、長い年月の経過で浸食を受けました。
下の図は地質断面図です。
層序は下から上に説明しています。
・花崗岩(ピンク色の部分)始生代34億年~25億年前のHilma Lake Granite
・火山岩(緑色の部分) 始生代34億年~25億年前のAlgoman造山運動時代の変質を受けた輝緑岩類
・堆積岩(膚色の部分)原生代前期25億年前~16億年前の Animikie Group
・赤い泥岩(オレンジ色の部分) 原生代後期16億年前~9億年前 のSibley Group
・アルカリ貫入岩(黒色の部分)原生代後期16億年前~9億年前のLogan Diabase Dike
・スペリオル湖寄りの地下から地上まで延びている赤い実線は大きな断層です。
サンダーベイのアメシストは、大地溝帯によって発生した断層と、断層に沿ったマグマの上昇で粘度の弱いアルカリ貫入岩(黒色)の貫入した事、また断層に沿ってシリカを含んだ熱水が鉄分を含み赤い色をしている堆積岩(Sibley Group)(オレンジ色)を通った事が大きな要因になっています。
上図はサンダーベイ地方の地質断面図
Sibley Group 赤い泥岩
下の写真は、Sibley Peninsula(Sibley 半島)の 鉄分を含む赤い泥岩 Sibley Group
白い岩石は炭酸塩岩です。
マグマの上昇と特徴的な地形
垂直に上昇した粘土の低いマグマは、水平に広がっていることがあります。サンダーベイの山は、堆積岩の中と山頂部に水平方向の岩脈を持っており、テーブル状の山が町や郊外から見られます。
マフィック貫入岩(輝緑岩 Diabase)は地下深部から上昇し、地層の中で冷えて固まった垂直方向の岩脈(Dike)と、水平に広がった岩脈(Sills)があります。そのように垂直に上昇した貫入岩が地表で広がったものがメサ(小規模なテーブル状台地)やビュート(大規模なテーブル状台地)と呼ばれています。
サンダーベイ市街地のメサ マッケイ山(Mt Mckay)
スペリオル湖からの高さ270m、海抜442m。
マッケイ山(Mt Mckay)の断崖
Sibley 半島の南端にあるスリーピングジャイアント(水平に広がった岩脈 Diabase Sills)
サンダーベイのアメシスト鉱山
サンダーベイのアメシストは1955年に発見され、その後サンダーベイの町の北部やSibley 半島の付け根の地域に多くのアメシスト鉱脈が見つかりました。
アメシストマイン パノラマ Amethyst Mine Panorama
サンダーベイのアメシストの鉱山では、観光地化されたアメシストマイン・パノラマが有名です。
アメシストマイン・パノラマはサンダーベイの町の北の小高い丘にあり、多くの観光客が訪れます。
現役時代に鉱山の掘削をしていたお爺さんがオープンピット(露天掘り)の鉱山を案内してくれました。
彼は、野外に展示してある大きな紫や赤のアメシストの説明をした後に、削岩機で掘ってる場所に見学者を連れて行き、1時間ほどかけて説明しました。
巨大なアメシストの塊
鉱山の壁に成長した大きなアメシストの結晶と、削岩機でどんな順序で掘り出していくのかを説明した後に、ガイドのおじいさんはポケットから何やら取り出して口の中に含み「これが宝石質のアメシストです!」と見せてくれました。彼が口に入れていたのは、表面が濡れると透明感がでるからで、透明で紫色が美しい宝石質の綺麗なアメシストでした。
10人ほどの見学客はそのアメシストを見て、「OH~!」と歓声をあげました。
案内のお爺さんが、口の中から取り出した宝石質のアメシスト
見学が終わるとズリで採集ができます。
拾ったアメシストは鉱山のバケツに入れて重量を測ります。バケツの重さで金額が決まりますが、多くの観光客が目を凝らしてアメシストを探すので、あまり良い物は見つかりません。
紫色の原石がゴロゴロする中を探しますが、立って探すのはご法度!
時間がかかろうと、太陽の照り返しが暑くて汗が出ようと、座った場所を「ここだ」と信じて目を凝らして探すのです。
カナダは空気が綺麗なので、紫外線が強く太陽の光をさえぎる物がない。この場所にいるのは日光にジリジリ照らされて暑くてたまりません。
「鉱物採集は粘りだ! 遠い日本からここまで来たのだ。トロントからも一日行程だった。負けてなるか!・・・」
そう自分に言い聞かせ、皮膚がヒリヒリするのを我慢して数箇所を探していくと….
・・・「あった!。ありました!、大きな結晶!」
選別されて要らない石が捨てられた場所でも、こんなに良い結晶が取れるんです!
拾ったアメシストはお金を払うのですが、この綺麗なアメシストを見せて追加金を払わなくて良いように、すぐに撮影して、そっとポケットにしまいました。
(ご注意)
このアメシストは貴重なマイコレクションとして、大切に保管しています♪ お取り扱いしているサンダーベイ産のアメシストは、ブルーポインツマインやその他のアメシスト鉱山で採集したり鉱山主と交渉して仕入れております。
ブルーポインツマイン Blue Points Mine
サンダーベイの町の手前50kmほどの所から北へ入り、しばらく行った林の中にBlue Points Mine があります。
夏季だけアメリカからオーナーがやって来て、ダイナマイトや削岩機で鉱脈を探し出します。
HWY17 から北に入った場所。道が紫色です。
ブルーポインツマインの看板
鉱山内にいたウサギ
鉱山ではウサギや鹿を見かけますが、オーナーの話では熊が出るそうで、車で追い払わないと逃げないんだそうです。
またハチドリが来るので、オーナーは砂糖水を入れた容器を置いています。カナダではハチドリを良く見かけます。
ブルーポインツマインは観光地化された鉱山ではなく、仕入や個人の鉱物コレクターがやってくるアメシスト鉱山です。
大きなハンマーやバールなどの大型の道具を使わないと、硬い石英脈を割るのは大変です。
露頭にあるアメシストの結晶は割るとバラバラになるので、クラスターとして掘り出すのは結晶の側面から割っていく必要があります。
石英脈は粘土質の堆積岩を取り囲んで貫入し、赤い粘土質堆積岩(Sibley Group)は硬くなって鉄分を奪われたように白っぽく色あせています。
アメシストパノラママインも同じでしたが、ブルーポインツマインも、このようなアメシストの産状です。
南側ピット
SibleyGroup (赤い堆積岩)取り込んだアメシスト脈
Sibley Group(赤い堆積岩) に貫入したアメシスト脈
ブルーポインツマインは南北に細長く掘られていますが、晶洞(ガマ)は南側の深い位置に多く、綺麗な赤いアメシストのクラスター(群晶)を見ることができます。
ダイヤモンドウイローマイン Diamind Willow Mine
この鉱山も暖かい季節に持ち主が来てアメシストを採掘します。
赤いアメシストは鉄分を含んだ赤い堆積岩(Sibley Group)に熱水が貫入してできるため、赤い土が広がっています。
サンダーベイ地域の自然と町の風景
Sibley 半島 写真は半島南部のスリーピングジャイアント
Sibley 半島はサンダーベイの北東にある半島で、HWY17のそばの大きなガソリンスタンドから左折します。
半島の南部には、昔たくさんの銀を産出した町 Silver Islet があります。
長い下り坂を降りていき高い場所にある鉄橋をくぐって先へ進みます。Pass Lakeを過ぎてしばらく行くと、スリーピングジャイアント州立公園のエリアになりますが、熊や鹿が多く夏季の運転には注意が必要です。
スリーピングジャイアントは、サンダーベイの町から見ると山の形が巨人が寝ているように見えた事から名前が付いています。
半島全体がスリーピングジャイアントのように思えますが、実は半島の南側の一部です。
スリーピングジャイアント州立公園の自然のルピナス
そばに寄ってきた野生の鹿 優しい目でこちらをじっと見ています。
熊 人が近づいたので退避中
Sea Lion
Diabase Dike マグマ(輝緑岩)が垂直に貫入して出来ました。
テリーフォックスの像
HWY17沿いの北側にテリーフォックスの像があります。
カナダの義足のランナー テリーフォックス(Terry Fox)は、1980年4月12日にニューファウンドランドのセントジョンズを出発し、
バンクーバー島のポートレンフリューへ向かって走り始めました。
毎日フルマラソンと同じ距離の約42kmを走りましたが、サンダーベイの東19,3kmのこの地で、
肺に転移した癌の痛みに襲われ走る事ができなくなりました。
出発から143日目、走った距離は5,373km、1980年9月1日の事でした。
翌年の6月28日、22歳の若さで彼はこの世を去りました。
ここを通る多くの人は、しばらくこの場所に寄って、彼の像を見て次の目的地に車を走らせます。
下の動画はホワイト・スローティッド・スパローの美しい声です。
夕方、テリーフォックスの像の駐車場で聞くことができました。
O Canada~ Canada~ Canada~
この鳥の鳴き声はこのように形容されますが、まさにピッタリですね!
テリーフォックスの像の土台のアメシスト
サンダーベイ産の綺麗な結晶のアメシストが使われています。
サンダーベイの町の入り口 Thunder Bayの看板
人口11万人(2009年)
HWY17をサンダーベイの町へ向かう時の風景 左側の向こうにマッケイ山が見えます。
サンダーベイの港
町の南部に港があり、鉄道、カナダ横断道路HWY17も港に近い位置にあります。
あとがき
スペリオル湖方面は途中に州立公園や国立公園が多く、自然が豊かで風景も美しい場所ばかりです。
サンダーベイは、トロントから車でHWY400、HWY69、HWY17を走ります。所要時間は約17時間46分、距離は1,379kmです。
ハイウエイの左手に位置するヒューロン湖の内湾のジョージアンベイから、スペリオル湖の沿岸を走るのですが、長距離の運転は大変でした。
ゆとりを持って走るには、途中で2泊するのをお勧めします。また、スペリオル湖沿岸の天気は低温の湖水の影響を受けやすく、夏は局地的な雷雨が発生し道路際の電柱が落雷で倒れることがありました。迂回道が殆ど無いHWY17では半日ほどの大渋滞になりました。
車で行かれる場合は必ずガソリンの量に気を付けながら、ガソリンスタンドの場所、宿泊地、距離と移動時間を十分に調べた上の旅行計画を立てられる事をお勧めします。
それから・・・食事をちゃんと食べるため、レストランの場所、スーパの場所もガッチリとお調べを!
何故なら、次の町が意外に遠くて、食べられない場合があるんです。
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